パラボリック SAR (ストップ アンド リバース) は、トレンドの特定と反転の予測、プライスの方向性を意識、トレンドを追いかけていくテクニカルインディケーターです。放物線のパラボリックSARと価格（ローソク足）の交差をトレンドの転換と捉え、途転売買の戦略を考える事が可能になります。パラボリックSARの基本的な考え方から、実際の取引でどのように活用できるのかを詳しく解説します。

目次

• パラボリック SARとは？
• パラボリック SARの特徴
• SARの計算方法
• パラボリック SARのパラメータ設定値について
• FXのトレードにおけるパラボリック SARの使い方
• パラボリックSARとテクニカルインディケーター
• パラボリックSARとMACDの組み合わせ
• パラボリックSARとFRACTAL（フラクタル）
• パラボリックSARとRSI
• パラボリックSARとDMIADX
• パラボリックSARのメリット・デメリットを検証
• FAQ

パラボリック SARとは？

パラボリック SARは、人気の RSI および DMI インディケーターの作者であるJ.W. ワイルダー(米国) によって開発されました。パラボリック SARは、チャート上下に描く放物線テクニカル指標、相場のトレンド転換点（ストップ＆リバーサル）を探る為に有効と考えられています。ボラティリティが出た結果、パラボリックの点線が離れていく傾向があるので、安直な逆張りを防ぎやすくなる可能性が高まります。値動きに合わせて動的に位置の調整をするため、トレンド相場で有効とされています。

初期設定では、Acceleration（AF）の値は0.02、Maximum（Max AF）の値は0.2となっています。

トレンドの動きに合わせて、チャート上にSARと名付けられた点が表示されます。これらの点（SAR）は、エントリーポイントとエグジットポイントを示すと考えます。描かれた放物線とローソク足の交差するポイントが売買転換点（途転）を示します。 例えば、SARが価格より下にあるときには、買いポジションを持つタイミングと考えられ　SARが価格よりも上にあるときには、売りポジションを持つタイミングと考えられます。売買転換点（途転）は　これらの点の位置が入れ替わるタイミングを示します。

パラボリック SARの特徴

• チャート上に点（ドット）で表示される
• トレンドの予測
• トレンドの転換を予測
• 設定値を調整することが可能
• シンプルでわかりやすい

トレンド系インディケーター

パラボリックSARは、トレンドの方向を視覚的に捉えやすくするために用いられるテクニカル指標の一つです。SARが価格を下回っている場合は、 市場が上昇トレンドにある事を示し、SARが価格を上回っている場合は、下降トレンドにある事を示します。 SARの位置を見ることで、市場のトレンドを把握することができます。

トレンドの転換を予測

パラボリックSARは価格の変動に合わせて変化するテクニカル指標です。トレンドの勢いによって、表示されるSARの点の位置（ロウソク足との間隔）が異なります。これは、ローソク足との距離が狭まっていくことを観察することでトレンドの転換の可能性が近い事を示しています。

たとえば、上昇トレンドでSARの点が価格の下にあり、価格の上に現れ始めた場合、上昇トレンドの勢いが弱まり、下降トレンドへの転換の可能性があると考えられます。

設定値の調整

取引スタイルや市場の状況に合わせて、パラボリックSARの設定値を調整できます。例えば、「加速因数」の設定値を調整することで、パフォーマンスを最適化できます。一般的に、加速因数は、設定値を小さくしすぎるとタイミングが遅れ、設定値を大きくするとダマシが発生する可能性が高くなるため注意が必要です。

分かりやすさ

他のテクニカル指標と比較して、パラボリックSARは比較的使いやすい指標の一つと考えられます。SARの点の位置によって相場のトレンドや転換点を視覚的に捉えやすくなっています。

SARの計算方法

SARのパラメータの一つである加速因数（AF＝Acceleration Factor）の値は、一般的には初期値として0.02から始まり、新しい EP（Extreme Point） に更新されるたびに0.02ずつ増加し、最大0.2までとなります。加速因数を大きな値に設定することで感度を大きくでき、小さな値に設定すると鈍くなります。

EP＝Extreme Pointは、現在のトレンドで観察された最高値または最安値である極値点です。 EPは、新しい高値又は安値の発生と共に最新のEPに更新されます。

SARを計算する式を見てみましょう。

SAR_next = SAR_current + AF * (EP - SAR_current)

• トレンド転換の最初のSAR: トレンド期間中の最高値、または最安値
• AF:AFの値は0.02から始まり、新しいEPごとに増加、0.2を最大値とする
• EP:上昇トレンドにおける最高値または下降トレンドにおける最安値
• 次のSAR:次の期間のSAR計算の結果
• AFを大きな値＝感度を大きく、AFを小さな値＝感度を小さく

新しい取引期間 (日次、毎時など) ごとに、最新の EP を使用して SAR 計算を更新し、必要に応じて AF が調整されます。価格が新たな高値または安値に達した場合、EP を更新し、AF を 0.02 ずつ (最大 0.2 まで) 増加させます。

SARが価格を下回る状態から価格を上回る状態（またはその逆）に切り替わった場合、トレンドが転換する可能性を示唆します。この時点で、最新の EP を使用して新しい SAR 計算を開始し、AF が 0.02 にリセットされます。

パラボリック SARのパラメータ設定値について

パラボリックSARは、パラメータを設定できます。加速因数（AF＝Acceleration）と最大値（Maximum）の数値を調整することによって、パフォーマンスを最適化できます。

加速因数の設定値が大きくなると、SARポイントが価格に向かってより積極的に動きます。 加速度が高いほど、より強いトレンドをより早く捉えることができます。ただし、特にトレンドがそれほど明確ではなく不安定な市場や荒れた市場では、誤ったシグナルが発生する可能性があります。

最大AFパラメータは、加速因数の最大値を調整できます。トレンドが強まると、SAR 計算の加速係数が増加し、ドットが価格をより近くで追いかけるようになります。最大 AF は、この加速度の上限を設定します。

最大AFを高く設定すると、SARは強いトレンドに素早く反応し、大きなブレイクアウトを捉えやすくなります。一方で、設定値が高すぎると小さな変動にも反応しすぎてしまい、SARが本来のトレンド反転を見逃してしまう可能性があります。

FXのトレードにおけるパラボリック SARの使い方

1.トレンドの状況を把握

前述したように、SARの点の位置を分析することで、市場のトレンドを把握できます。上昇トレンドでは価格の下にSARの点が表示され、下降トレンドでは価格の上にSARの点が表示されます。

SARが価格を下回った場合は上昇のサイン、SARが価格を上回った場合は下降のサインと捉え、売買の判断材料にすることができます。

2.トレンドの転換のタイミングを予測

パラボリック SARの強みは、潜在的なトレンド転換を示す点にあります。

SARの点の位置が変わる場合（例えば、上昇トレンドで下から上へ）、トレンドの弱まりや反転の可能性を示しています。これは反転を保証するものではありませんが、取引を再評価し、ポジションを手仕舞い、調整、又は新規エントリーする可能性がある事を提案しています。

3.トレーリングストップに活用

パラボリック SARの動的な性質は、トレーリングストップ設定の参考として活用できます。トレンドが継続している間、SARは通常、その方向に追随します（ロングポジションの場合は上昇、ショートポジションの場合は下降）。SARの点が値動きによって位置を調整するとき、トレーダーはストップロス注文を最新のSARの点の位置に移動させます。価格が動いたときにストップロスを調整することで、利益を有利に確保することができます。ただし、SARは価格変動に完全に追従するわけではなく遅れる場合もあるため、他のテクニカル指標やチャートパターンと組み合わせることも必要になります。

パラボリックSARとテクニカルインディケーター

パラボリックSARはトレンドの方向性を示す有用な指標ですが、一つのテクニカル分析だけに依存する取引は当然のことながら控えるほうが賢明です。他のテクニカルインディケーターと組み合わせることで取引戦略を多角的に分析することが可能になります。ここでは、パラボリックSARを他のテクニカルインディケーターと組み合わせて、取引戦略を構築する方法をご説明します。

パラボリックSARとMACDの組み合わせ

パラボリックSARとMACDを組み合わせることで、トレンドの方向性と勢い、2 つの移動平均間の関係から追跡し転換点を合わせて考察することで、売買のタイミングを判断できる可能性があります。例えば、パラボリックSARが上昇トレンドを示し、MACDラインがゴールデンクロスを形成している場合、これらの指標が一致することで上昇トレンドが継続する可能性が高まっていると判断できるかもしれません。

あるいは、パラボリックSARが下降トレンドを示し、MACDラインがデッドクロスを形成している場合は、下降トレンドが強まっている可能性を示唆していると考えられます。この二重の確認はある一定の根拠を示している可能性があります。他のテクニカル指標やファンダメンタルズ分析もあわせて検討し、総合的な判断を行うことが重要です。

パラボリックSARでトレンドの方向性を、MACDでトレンドの勢いや反転のタイミングを推定することで、総合的な視点から市場の動きを捉えることができます。パラボリックSARとMACDの組み合わせは、トレンドが変動しやすい相場において、取引判断の参考となる可能性があると思われます。 これにより、トレンドフォロー戦略だけでなく、トレンド反転戦略においても、より精度の高い売買シグナルを得られるかもしれません。

パラボリックSARとFRACTAL（フラクタル）

Awesome Oscillator（オーサㇺ・オシレーター）で知られるビル・ウィリアムズ氏考案のFRACTAL（フラクタル）は、トレンドの転換点を矢印で示すことで知られるテクニカル指標です。パラボリックと比較して早くトレンドを捉える可能性がありますが、出現頻度は比較的少ないという側面もあります。短い時間足ではフラクタルが出現した後、次のローソク足が確定する前に消えてしまうこともあるので注意が必要です。一般的に４時間足や１時間足などの比較的長い時間足での利用が期待できると考えられています。

パラボリックSARとRSI

パラボリックSARと相対力指数（RSI）を組み合わせ、トレンドの方向性と勢いを示すモメンタムの分析を同時に進めることができます。これにより、より多角的な視点から市場を捉え、取引の判断材料を豊かにすることができます。特に、トレンド転換のタイミングをより的確に捉えたい場合や、買われすぎ・売られすぎの状態を判断したい場合に有効と思われます。

例えば、SARが価格バーの下に位置し、上昇トレンドを示しており、RSIが50を超えているがまだ買われすぎの領域に入っていない場合、これは強い買いシグナルを示唆していると思われます。この組み合わせは、市場が上昇傾向にあり、さらなる上昇に期待できるかもしれません。逆に、SARが価格バーの上に位置し、下降トレンドを示しており、RSIが50を下回っていても売られすぎの領域ではない場合は、売り圧力が強まっている可能性も考えられます。この組み合わせは、市場の勢いと反転の可能性を考慮しながら、トレンドの方向を確認するのに役立つと思われます。

パラボリックSARでトレンドの方向性を、RSIでトレンドの強さと反転ポイントを推測することで、総合的な視点から市場の動きを捉えることができると考えられます。 この相乗効果は、誤ったシグナルを除去するのに役立ち、取引に対するアプローチを提供し、最終的に取引の精度と収益性を向上する可能性を高められると考えられます。これにより、トレンドフォロー戦略だけでなく、トレンド反転戦略においても、より精度の高い売買シグナルを得られるかもしれません。

パラボリックSARとDMIADX

パラボリックを考案したJ.W.ワイルダー氏は、DMIADXを併用してトレンドを確認することを提案しています。
ADXは、トレンドの方向は区別せずトレンドの強さだけを表現します。ADXが上昇している時はトレンドが強まっていると考えられ、下降している時は、トレンドが弱まり、保ち合い相場であることを示唆していると考えられます。

パラボリックSARのメリット・デメリットを検証

パラボリックSARのメリット

パラボリックSARインディケーターは、FXトレーダー、特にテクニカル分析を始めたばかりの方にとって、人気のツールとなっています。

トレンドの追跡:SARは市場のトレンドを視覚的に強調することに優れています。上昇トレンドでは価格の下に、下降トレンドでは価格の上にSARの点が表示されることで、現在のトレンドの明確で視覚的な手がかりを提供し、それに応じてポジショニングできる可能性を支援すると思われます。

トレンドの反転のシグナル:SARの強みはトレンドの把握だけでなく、潜在的なトレンドの反転を示唆する点でも有用な指標と考えられます。SARの点がローソク足に対してどのような距離に位置しているか及び途転を注視することで、市場が変化の兆しを見せ始めている事や、早期のシグナルを捉えることができるかもしれません。市場の大きな変化に備え、より適切な取引戦略を立てる可能性を高めると思われます。
使いやすさ: パラボリックSARは、他のいくつかのテクニカル指標と比べて、理解しやすく、視覚的にトレンドの把握や転換点の予測に役立つ指標です。SARの点が価格バーに対してどのように配置されるかを観察することで、現在のトレンドと変化の兆候を捉えることができると考えられます。

トレーリングストップ：パラボリック SARの点が価格の動きに合わせて変動する特性を利用し、ストップロス注文を調整することで、効率的なリスク管理が期待できます。トレンドが続いていると考えられる場合、この手法は有効であると考えられています。
 

パラボリックSARのデメリット

パラボリックSARはFXトレーダーにとって役立つツールの一つですが、万能ではありません。トレンドの方向性を示す上で有用なツールではありますが、パラボリックSARだけを使用してFX取引で常に利益を上げられるとは限りません。

限定的:パラボリックSARは主にトレンドの方向性と反転の可能性に焦点を当てています。経済指標の発表や地政学的な出来事など、他の要因による価格変動は考慮されていません。より幅広い視点で市場を分析することが重要です。

騙しのシグナルの可能性:パラボリックは、特にボラティリティが高いときや価格変動が激しいときに、誤ったシグナルを出すことがあります。パラボリックSARだけに頼りすぎると、不適切なタイミングで取引を開始または終了する可能性があります。

まとめ

パラボリックSARは、トレンドの大きな流れを把握する上で役立ちますが、紆余曲折をすべて示すわけではありません。その限界を理解し、他のテクニカル指標やファンダメンタルズ分析と組み合わせることで、より確度の高い取引判断に繋げることができると思われます。パラボリックの傾向に関する洞察と複数の情報を総合的に判断することで、誤ったシグナルに振り回されるリスクを減らし、取引することを目指しましょう。

最後に

外国為替証拠金取引（FX）は、比較的少額で取引できる反面、差し入れた証拠金以上の多額の損失が生じるおそれのある非常にリスクの高い商品です。取引の仕組みと取引に伴うリスクを十分に理解したうえで、自らの責任で適切な投資判断を行ってください。損失を許容できる資金の範囲内で　自己の資力、取引経験及び取引目的等に照らし、熟慮のうえで取引することが重要です。