円安とは、日本円(JPY)の価値が他の主要通貨(米ドル、ユーロ、英国ポンド)と比較して相対的に低くなる状態、円安になると外貨1単位を購入するのにより多くの円が必要になることを意味します。
1ドル100円が150円になってどうなったか?(過去を振り返る)
1ドルが100円から150円になるということは、日本円(JPY)が対米ドル(USD)に対して円安になったことを示しています。以前は1ドルを購入するために100円だったのが、150円必要になるということは、円の価値が50円分下落したことを意味します。
1ドル150円が100円になるとどうなる?(その未来はあり得る?)
1ドルが150円から100円になるということは、日本円(JPY)が対米ドル(USD)に対して円高になることを意味しています。1ドルを購入するために150円必要だったのが、100円で購入でき、円の価値が50円分上昇することを意味します。2024年5月の視点からは そのような未来が訪れるシナリオを想像することは難しいです。
円安のメリット:
輸出価格の競争力向上:海外の購入者にとって、日本製品がより手頃な価格で購入可能になります。そのため、日本企業の輸出が増加する可能性があります。円安による輸出増加を背景に、中長期的な販売拡大及び生産増加につながれば、企業の競争力強化、雇用の増加、賃金上昇など経済成長にプラスの効果をもたらす可能性があります。
観光客の増加:円安は、訪日観光客にとって日本への旅行をより手ごろで魅力的なものにする可能性があります。宿泊費、食費、ショッピング、お土産代などの観光にかかる支出が割安になるため、多くの訪日観光客にとって日本は魅力的に映るでしょう。また、インバウンドの観光産業だけでなく、副次的に製造業、サービス産業などの関連産業にも波及効果をもたらし、日本経済全体に増収や賃金上昇、雇用の増加などのプラスの効果をもたらす可能性があります。
海外事業の収益増加:海外に展開している日本企業にとって、その収益を円換算する際に円安により、利益が増加する可能性があります。
円安のデメリット:
輸入コストの増加:外貨を購入するためにより多くの円が必要となるため、結果として輸入コストの上昇は避けられず、販売価格に転嫁される可能性があります。消費者にとって輸入品はより高価になり、円換算によるエネルギー価格の高騰は、光熱費や食費など、生活費全般に影響を与えることが懸念されます。
購買力の低下:円安の影響により物価が上昇、輸入品だけでなく全般的に購買力が低下する可能性があります。また、物価上昇に伴う買い控えなど経済全体にマイナスの影響をもたらす可能性があります。
円資産の価格変動リスク:円安は、円資産にとってドルに対する資産価値の変動リスクを高める可能性があります。つまり円安と物価上昇(インフレ)が続くと、円資産を前提とするするドルに対する日本の資産価値の目減りにつながる可能性があります。
円高と円安が企業や家計に及ぼす影響
円高になれば、食料品、衣料品、電化製品などの輸入製品や輸入原材料の価格が下落する傾向があります。結果として、国内の物価が下落し、消費者に恩恵をもたらす可能性があります。一方、急激な円高は輸出産業にとって打撃を与える可能性があります。日本の輸出品は外国のバイヤーにとって割高となり、国際競争力の低下につながる可能性があります。輸出関連産業の売上減少や減収、賃金の低下や雇用の喪失につながるリスクも否定できません。過去、日本は長きにわたって円高不況と言われる時代を経験してきました。産業構造の変化によって多くの製造業や一次産業が海外に移転されたことが今日の円安に繋がっています。
円安になると、日本の輸出企業にとって製品の輸出価格が下落し、輸出が促進される可能性があります。結果として、国際競争力や販売力が向上し、日本の輸出産業の活性化や設備投資の促進が期待できます。今日の円安トレンドが製造業や一次産業の回帰に繋がれば日本は円安の影響をより享受できる可能性があります。さらに、円安により訪日外国人観光客にとって日本への旅行がより手頃な価格になり、観光業界に恩恵をもたらす可能性があります。しかし、円安になると輸入品や輸入原材料の価格上昇は避けられず、日本の消費者にとって物価の高騰につながるリスクがあります。物価の高騰はコストプッシュインフレと呼ばれるインフレの一種を引き起こし、賃上げ、再分配、減税措置などが伴わない場合、家計の負担増などのマイナス要因による購買力の低下や経済成長率の鈍化につながる可能性があります。
円安から円高トレンドが起こるとすればの要因
世界経済の動向: 世界経済が好調であれば、輸出競争力を維持するために円安が有利になる可能性がありますが、日本経済にとって最適な円安水準は明確ではありません。変動相場制の下で為替レートは需給関係により変化し続けます。世界経済が低迷した場合、円は安全資産として買われる可能性があり、為替相場は調整につながる可能性があります。
金融政策: 日銀による金利政策で、金利が上昇することで円高方向に調整の役割を果たす可能性はあります。しかしながら日銀の金利政策は米連邦準備理事会(FRB)の政策金利との兼ね合いや金融・政治情勢の影響を受ける為、可能性は常に不確定になります。
日本経済にとっての円安が及ぼす影響は、経済状況や政治的背景などによっても異なります。近年の円安の要因は「円の脆弱性」などと語られることもありますが、歴史的にみてもドル円相場は政治情勢、経済状況、金融政策、産業構造、市場心理など、さまざまな要因によって大きく変動してきました。
円安がさまざまなセクターに及ぼす影響、その事象がどのように引き起こされるか、日本経済の現状、社会構造、経済動向、国際政治情勢など、さまざまな視点からのファンダメンタルズの理解を深めることが重要となります。
2024年に円高方向のトレンドにシフトする可能性はあるのか?
アナリストらは、2024年に円が上昇する可能性についてさまざまな見解を示していますが、一部の楽観論は相殺要因によってバランスされています。
日銀は、限定的ではあるもの最終的には金融政策正常化に強硬な姿勢であると考えられていました。予想に反する慎重な発言等により市場参加者を牽制もしてきました(2024年5月)。米国が長期にわたって高金利にとどまるのと比較して、日本の金利が引き上げられれば、円高トレンドにつながる可能性はあります。
2023年12月のアナリストらの一般予測では、ドル安が起こる可能性があり、ドルは年末までに対円で約130円まで下落する可能性があるとする観測的見解も出されていました。逆に、円安要因としては 日銀がわずかに金利を変更したとしても、日米の金利差の乖離は2024年も続くとも予想され 金利差の乖離が、より高いリターンを求める投資家にとっての円の魅力を引き続き弱め 円安トレンドを後押しする可能性を示唆していることもあげられています。アナリストらは、市場参加者が円相場を注視していることを認めており 2024年に円がある程度回復する(円高方向に調整される)可能性があると見ていました。しかしながら1ドル=151円台の水準を突破して160円の高値をマーク、さらなる円安トレンドを引き起こす可能性がある事も指摘しました。日米金利差の継続、相対的低金利政策、潜在的な市場心理、実質的貿易赤字基調により、円安トレンドを反転する円高トレンドは限定的になる可能性があると認識は揺れ動いています。
円安が1990年以来34年ぶりの水準に達し1985年のプラザ合意以前の円安時代を思わせます。円安トレンドが継続する潜在心理は、労働人口の縮小、産業の空洞化による貿易黒字を稼げない輸出構造、日本企業の競争力の低下、エネルギー価格上昇によるインフレなど多岐にわたると考えられます。日本だけでなく世界にも円安の懸念が広がる中 今後の展開が注目されます。