そもそもFXとは?
「FXは本当に儲かるのか」「億を稼ぐことは可能なのか」――この疑問を抱いて検索される方は少なくありません。本記事では、海外規制当局や日本の業界団体、国税庁などの公的データをもとに、FXの利益機会と現実の損益分布をまとめました。可能性とリスクの両面を、初心者にも分かりやすく整理しています。
FX(Foreign Exchange)は「外国為替証拠金取引」の略称であり、証拠金を担保に2つの通貨を売買して為替レートの変動から利益を狙う金融商品です。「FXは相場の分析や資金管理などの知識が求められる投資」と考えられている一方で、金融庁は「証拠金以上の多額の損失が生じるおそれのある非常にリスクの高い商品」と公式に位置付けており、収益機会と損失リスクが表裏一体となっている点が特徴と言えます。
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グローバル市場と日本市場の規模
世界の外為市場は極めて大きく、BIS(国際決済銀行)が3年ごとに実施する「Triennial Central Bank Survey 2025」によれば、2025年4月の1日平均取引高は約9.6兆ドル(円換算で1,400兆円超)に達しました。これは2022年比で約28%の増加です。取引地別では英国(38%)が首位を維持し、米国、シンガポール、香港、日本が上位を占めています。
国内市場も巨大です。一般社団法人金融先物取引業協会の月次速報によれば、2026年3月の店頭FX出来高は11,670,373億円、すなわち約1,167兆円に達しており、店頭FX取扱会員数は45社となっています。日本も主要な外為取引拠点の一つであり、個人FX取引が活発な地域として位置付けられます。
FXで得られる2種類の利益
FXの利益は、大きく次の2種類に分かれます。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| キャピタルゲイン | 為替レートの変動による売買差益。例:1ドル=150円で買い、151円で売却すれば1円分の差益 |
| インカムゲイン | 通貨間の金利差による日々の受払(スワップポイント)。低金利通貨を売って高金利通貨を買えば受取、逆方向では支払いが発生 |
短期トレードではキャピタルゲインが収益の中心となり、中長期保有ではスワップポイントの積み上げが収益の一部を構成する傾向があります。
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レバレッジの仕組み
FX最大の特徴のひとつがレバレッジです。これは少額の証拠金で数倍規模の取引が可能となる仕組みで、金融庁の内閣府令に基づき個人口座は最大25倍までと規制されています。例えば4万円の証拠金でおよそ100万円分の取引を行えますが、少ない証拠金で大きな取引を行う分、同じ値動きでも証拠金に対する損益の振れ幅が大きくなる点には注意が必要です。レバレッジは利益機会を広げる一方で、リスクを増幅させる諸刃の剣と言えます。
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FXは本当に儲かる?
FXに利益機会があるのは事実ですが、同時に、FXを含むレバレッジ取引では多くの個人投資家が損失を経験していることを示す海外規制当局のデータもあります。ここでは、その両面を構造的に整理します。
FXに利益機会があると考えられる理由
利益機会の根拠は、次のような市場の構造的特性にあります。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 高い流動性 | BIS 2025 によれば1日9.6兆ドル規模の取引高。スプレッドが狭く、約定しやすい傾向 |
| 24時間取引可能 | 月曜早朝〜土曜早朝まで原則取引可能。東京・ロンドン・NYの3大市場が時差でカバー |
| レバレッジの活用 | 個人最大25倍。少額資金から取引機会を得られる(規制上限であり推奨値ではない) |
| 売りからも参入可能 | 上昇相場・下落相場のどちらでも利益を目指せる。株式の信用取引と異なり、FXは構造上ショートが容易 |
| インカムゲインの積み上げ | 金利差を受け取れる場合あり。中長期保有でスワップポイントが積算される可能性 |
| 通貨ペアの選択肢 | メジャー~マイナー~エキゾチックまで、自分の戦略に応じて選択可能 |
ただし、いずれの利益機会も「ただし」が伴います。例えばレバレッジは資金効率を高める一方で、不利な値動きが起きた際には証拠金に対する損失の振れ幅も大きくなります。スワップポイントも、金利差が逆転すれば受取が支払いに変わる可能性があります。利益機会とリスクは、常に同じ硬貨の表裏として理解しておく必要があるでしょう。
FXで利益を上げにくいと考えられる理由
一方で、FXを含むレバレッジ取引では、多くの個人投資家が損失を経験していることを示す海外規制当局のデータもあります。ここでは、利益を上げにくくなる構造的な理由を整理します。
(1) レバレッジによる損失の拡大
金融庁は「相場が急激に変動したときは、ロスカットルールが適用されても、証拠金の額を上回る損失が生じることがあります」と公式に注意喚起しています。ロスカット制度は損失拡大を抑えるための仕組みですが、損失を必ず一定額で止める保証ではありません。相場急変時や流動性が低い局面では、想定より不利な価格で決済され、預け入れた証拠金を上回る損失や不足金が発生するケースもあります。
(2) 情報の非対称性と業務モデルへの懸念
店頭FXやCFDは、業者と顧客の相対取引として提供されることが多く、情報の非対称性や利益相反、約定品質の確認が重要になります。英国の金融行為監督機構(FCA)は、CFD分野において、リテール顧客が商品の複雑さやリスクを十分に理解しないまま取引していること、また一部業者が損失を出しやすい経験の浅い顧客に依存するビジネスモデルを採っていることに懸念を示しています。そのため、金融庁登録業者かどうか、財務健全性、約定ルール、スプレッド、スリッページの扱いなどを確認し、業者選定を慎重に行うことが重要です。
(3) 行動経済学的バイアス
ノーベル経済学賞を受賞したDaniel Kahneman と Amos Tversky のプロスペクト理論によれば、人は同額の利益より損失を約2倍強く感じる傾向があります(損失回避性)。この心理特性により、個人投資家は利益が出ると早めに利確し、損失が出ると損切りを先延ばしにする傾向があるとされ、これが「小さな利益と大きな損失」の積み重ねを生む構造的要因と考えられています。
(4) 過剰取引と過信
行動ファイナンスの古典的研究である Barber & Odean(2000)"Trading Is Hazardous to Your Wealth" では、最も活発に取引する個人投資家層は、最も非活発な層と比べて年間リターンが約7%ポイント低いと報告されています。「取引回数を増やせば儲かる」という直感は、実証的にはむしろ否定されています。
(5) 知識・経験の不足
FXは経済指標、金融政策、地政学リスク、テクニカル分析など、複数の知識領域を必要とします。学習なしに成果を出し続けることは困難であると言えるでしょう。
(6) スプレッド・スワップマイナスのコスト
取引のたびにスプレッドコストが発生し、頻繁な売買はそれだけでも利益を圧迫します。スワップポイントもポジションの方向によってはマイナスとなり、長期保有でコストが累積する可能性があります。
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利益を出している人の割合
ここからは出典を特に注意深く扱う必要があるテーマです。複数の調査機関で対象範囲・期間・調査方法が異なるため、単純な比較は誤解を招きやすい点を最初にお断りしておきます。
| 出典 | 対象 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ESMA(2018年) | EU の CFD 取引データ | 個人口座の74〜89%が損失 | CFD全般(FX以外も含む) |
| FCA(2016年) | 英国 CFD 取引業者の代表的サンプル | 82%が損失 | CFD全般。年間約1億ポンドの個人投資家損失防止と推計 |
| 金融先物取引業協会(2018年9月公表) | 日本の個人投資家1,000名アンケート(2017年の損益) | 約60.3%が「プラス」と回答 | 業界自主規制機関による自己申告アンケート |
ここで注意していただきたいのは、これらの数値は同じものを測っていないという点です。
- 対象範囲が異なる:ESMA・FCA の数値はCFD 全般(株価指数・コモディティ・暗号資産CFD等を含む)が対象で、FX単体ではありません。一方、金融先物取引業協会の数値は日本のFX単体に限定されています。
- 調査手法が根本的に異なる:ESMA・FCA は業者の口座取引データを集計したものであるのに対し、金融先物取引業協会の数値は個人投資家1,000名へのインターネットアンケート(自己申告)で「昨年(2017年)の FX の損益はプラスでしたか」に対して60.3%が「プラス」と回答したものです。
- 集計対象の選定軸が異なる:ESMA・FCA は「ある期間中に損失を出した口座割合」、金融先物取引業協会は「個人投資家への自己申告調査でプラスと回答した割合」であり、母集団も異なります。
- 生存者バイアスの可能性がある:特にアンケート調査では、現在取引を続けている層が中心になりやすく、過去に大きな損失を出して撤退した参加者の実態を十分に反映しにくい可能性があります。一方、ESMA・FCA の数値は業者の口座データに基づくため、アンケートとは性質が異なります。
つまり「海外では8〜9割が損失、日本では6割が利益」という単純な対比は、調査対象の違いを無視した比較になります。言えるのは、複数の海外規制当局の調査では CFD 口座の7〜9割が損失と報告されており、日本のFX調査でも一定割合は損失層が存在するという事実です。EU・英国では CFD 業者に過去12ヶ月の損失口座割合の開示義務が課されているため、業者ごとの実績数値を読者自身で確認することも可能となっています。
いずれにしても、FXが「誰でも簡単に儲かる」金融商品ではないことは、複数の公的データから読み取れるのではないでしょうか。
FXで儲かる・稼げる人の特徴
継続的に取引を行う個人トレーダーには、いくつかの共通する行動特性が見られることがあります。これは精神論ではなく、行動ファイナンスの実証研究や規制当局の指摘から導かれる傾向です。
下記に例をあげます。
① 損切りを徹底する
プロスペクト理論の「損失回避性」に留意し、計画的に損切りを実行することは、リスク管理において有効な手法の一つと考えられます。事前に「資金の○%で損切り」「チャートのこのラインを割れたら決済」などの基準を設定し、感情に流されずに執行することが、長期的な取引を続ける上での心構えとして挙げられます。
② リスク管理を徹底する
1取引あたりのリスク許容額を事前に設定し(例:資金の1〜2%など)、レバレッジを規制上限に張り付けないことなど、レバレッジを適切に管理することは一つの選択肢です。25倍はあくまで規制上限であり、初心者は実効レバレッジで5倍以下を意識する手法が選択肢として挙げられるかもしれません。ポジションサイズを資金量に応じて適切に調整することも検討してみましょう。
③ 過信を避け、オーバートレードしない
Barber & Odean の研究が示すとおり、取引回数が多いほどリターンが下がる傾向があります。「取引すること自体が目的化」する状態を避け、自分のルールに合致した場面でのみエントリーする規律が、継続的に取引を行うトレーダーに共通する特徴と考えられるかもしれません。
④ 一貫したトレードスタイルを持つ
スキャルピング、デイトレード、スイングトレード、長期保有など、自分の生活サイクル・性格・資金量に合ったトレードスタイルを検討することが大切です。なお、スキャルピングは秒〜分単位の高速取引であり、判断の速さと厳格な規律が要求されるため、初心者にはリスクやコスト負担への配慮がより必要に傾向があるかもしれません。
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⑤ 学習を継続する
FXは投資相場の分析や資金管理などの知識が求められる投資です。ファンダメンタルズ(経済指標、金融政策の動向)とテクニカル(チャートパターン、トレンド分析)の両輪で学習を続ける姿勢が、長期で生き残るトレーダーの特徴の一つです。実際に取引する前にデモ口座で取引フローや注文方法に慣れておくことも、リスクを抑えた学習方法の一つです。
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⑥ 感情コントロールと記録
トレード日誌をつけ、自分の判断を客観視する習慣も重要と考えられます。特に「損失が出た直後に取り返そうとする」ような感情的判断は、当初の想定を超えた損失に繋がるリスクがあります。ルールを離れた追加エントリーは慎重に避けたいところです。
⑦ 適切な業者を選ぶ
金融庁登録業者を利用することは、信用リスクを抑える基本です。金融庁は「無登録業者との取引は、トラブルが生じても追及は極めて困難」と注意喚起しており、無登録業者との取引は詐欺被害の温床にもなり得ます。取引手法だけでなく、約定環境・スプレッド・資金管理のしやすさといった取引基盤を確認してみましょう。
FXで取引しやすい主要通貨ペアは?
ここでは、FXの代表的な通貨ペアと、初心者がそれらを選ぶ際の観点を整理します。「これを買えば儲かる」という性質の話ではなく、流動性やボラティリティ、取引時間帯との相性といった構造的な選択軸を確認していきましょう。
通貨ペアの分類
通貨ペアは、流動性や対象通貨の性質によって次のように分類されます。
| 分類 | 代表例 | 特徴 |
|---|---|---|
| メジャー通貨ペア | USD/JPY、EUR/USD、GBP/USD、USD/CHF、AUD/USD、USD/CAD、NZD/USD | 流動性が比較的高く、スプレッドが狭い傾向。 |
| クロス円 | EUR/JPY、GBP/JPY、AUD/JPY 等 | 円が絡むが、USD以外のペア |
| マイナー通貨ペア | EUR/GBP、EUR/AUD、AUD/NZD 等 | 流動性は比較的中位、スプレッドはやや広め |
| エキゾチック通貨ペア | USD/TRY、USD/ZAR、USD/MXN 等 | 新興国通貨を含む。ボラティリティが比較的大きい |
BIS 調査が示す世界の通貨ペア別取引シェア
国際通貨研究所(IIMA)による BIS 2022 邦訳レポート(通貨ペア別の詳細シェアが日本語で整理された直近の確定版)では、世界の通貨ペア別取引シェアは次のように報告されています。なお、BIS 2025 では USD/CNY のシェアが 8.1%(2022年の6.6%から)へ上昇するなどの構造変化も観察されています。
| 通貨ペア | シェア |
|---|---|
| EUR/USD | 22.7% |
| USD/JPY | 13.5% |
| GBP/USD | 9.5% |
| USD/CNY | 6.6% |
| USD/CAD | 5.5% |
| AUD/USD | 5.1% |
世界の取引量上位3ペア(EUR/USD、USD/JPY、GBP/USD)だけで、世界の外為取引のおよそ半分弱を占めていることが分かります。通貨別シェアでは米ドルが88%、ユーロが31%、円が17%(双方向集計のため合計200%、BIS 2022 時点)となっており、円はグローバルで3番目に取引される通貨です。BIS 2025 では米ドルのシェアが89.2%へさらに上昇するなど、ドル基軸の構造はより強まる傾向にあります。
通貨ペア選びの観点
初心者が通貨ペアを選ぶ際に、判断材料となる観点を整理しておきましょう。
| 観点 | 解説 |
|---|---|
| 流動性 | 高いほどスプレッドが狭く、約定しやすい傾向。 |
| ボラティリティ | 高いほど利益機会も損失リスクも大きい傾向。エキゾチック通貨は比較的、値動きが激しく、リスクが高い傾向 |
| スプレッド | 通常は EUR/USD、USD/JPY が狭い傾向 |
| スワップポイント | 比較的金利差が大きいペアは長期保有でインカムゲインを得られる場合があるが、金利逆転時には支払いに転じるリスクある可能性 |
| 取引時間帯との相性 | USD/JPY は東京時間も活発に動き、EUR/USD はロンドン・NY時間に取引が集中する傾向 |
通貨ペアの選択は、自分のライフスタイル・取引可能な時間帯・リスク許容度との相性で検討しても良いかもしれません。「取引量が多い通貨ペア=自分にとって最良の通貨ペア」とは限らないため、相場の特性を理解したうえで選択していくことが大切と言えるでしょう。
FAQ
FXに関してよく寄せられる質問について、データに基づきお答えします。
最低取引単位は業者により異なりますが、国内の一般的な水準は1,000通貨または1万通貨です。一部業者では100通貨、1通貨単位から取引可能な業者も存在します。
USD/JPY=150円、レバレッジ25倍を前提とした場合、必要証拠金の目安は次の通りです。
| 取引単位 | 必要証拠金(目安) |
|---|---|
| 1,000通貨 | 6,000円 |
| 1万通貨 | 6万円 |
| 10万通貨(1ロット) | 60万円 |
ただし、必要証拠金ぎりぎりの資金で取引を始めると、わずかな逆行でもロスカットに近づきやすくなります。そのため、最低限の必要証拠金だけでなく、余裕資金を含めて考えることが重要です。例えば、必要証拠金の2〜3倍程度以上を用意しておくと、短期的な逆行にも対応しやすいかもしれません。1万通貨を取引するのであれば、12万〜18万円程度を一つの目安として検討してみるとよいかもしれません。実際に取引する前にデモ口座で操作と相場感に慣れておくことも、初心者の方には推奨される進め方のひとつです。
少額の資金から高いリターンを目指すという試みは、現実的な達成は極めて困難であると考えられます。10万円を1億円にするには1,000倍のリターンが必要であり、例えば年利100%(資金倍増)を10年連続で達成すれば理論上は到達しますが、レバレッジ25倍をフル活用しても安定して年100%以上のリターンを維持できる個人は極めて稀と考えられます。
前述の海外規制当局データ(CFD全般を対象とした調査ではあるものの、リテール口座の7〜9割が損失)に照らせば、レバレッジ取引全般において、多くの参加者が損失を経験し得る点には注意が必要です。現実は厳しいという両面を冷静に認識することが重要ではないでしょうか。
正確な人数を示す公的統計は存在しません。国税庁は所得階級別の納税者数を公開していますが、所得源泉別(FX由来かどうか)には分けていません。金融庁・金融先物取引業協会も「FXで億り人になった人数」を公表していません。
参考までに、海外規制当局のCFD関連データでは、リテール口座の多くが損失を出していることが示されています。ただし、これはFX単体の「億り人」の人数を推計できるデータではありません。したがって、正確な割合は不明であり、「億」に到達する層は、ごく一部に限られた層であると考えられます。
世界的に著名な億トレーダーは、ヘッジファンドマネージャーやプロ投資家のような有名人が中心であり、個人FXトレーダーで「億り人」となった事例も SNS 等で散見されますが、統計的な把握は困難な状況です。「○%が億り人になる」といった具体的な数値を示すデータは、現時点では存在しないとお考えいただくのが適切でしょう。
参考記事
数値だけを並べると次のような対比となりますが、調査主体・期間・方法が異なるため、単純比較はできないことが前提となります。
| 観点 | FX | 有価証券売買損益(日本・参考) |
|---|---|---|
| 利益層の割合(参考値) | 約60.3%(金融先物取引業協会 2018年9月公表、個人投資家1,000名アンケート、2017年の損益) | 43.0%(日本証券業協会 2025年調査、2024年の有価証券売買損益・含み損益を除く) |
| 損失層の割合(参考値) | 約40%(同上、自己申告アンケート) | 9.0%(同上、有価証券売却者に関する参考値) |
| 取引時間 | 24時間(平日) | 9:00-11:30、12:30-15:30(東証) |
| レバレッジ | 最大25倍(個人) | 信用取引で約3.3倍 |
| 課税方式 | 申告分離課税20.315%(先物雑所得) | 申告分離課税20.315%(譲渡所得・配当) |
| 損益通算 | 先物雑所得内のみ | 上場株式等の譲渡損益・配当等との通算可(配当等は申告方法による) |
FX の調査は個人投資家1,000名へのアンケート(2017年の損益、自己申告)、株式の数値は日本証券業協会 2025年調査における有価証券売却者の売買損益(2024年、含み損益を除く)であり、調査手法も対象期間も母集団も異なります。なお、株式側の数値は厳密には「株式のみ」ではなく、日本証券業協会調査における有価証券売買損益の自己申告データです。したがって「数字上は FX の方が利益層が多い」と読み取れるとしても、儲かりやすさの順位付けには使えません。
構造的な違いとしては、FX は通貨間の相対的な強弱を取引する24時間市場で、レバレッジが高く配当はないもののスワップポイントという形でインカムゲインを得られる場合があります。一方で株式は企業の業績や成長を取引対象とし、取引時間は限定的、レバレッジは低いものの配当があり、企業の倒産リスクも考慮する必要があります。
参考記事
選択基準は「どちらが儲かるか」ではなく、自分の資金・時間・リスク許容度に見合っているかをご自身で慎重に検討ください。
FXの利益に関する税務上の取扱いは、国税庁のタックスアンサーで次のように整理されています(執筆時点)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所得区分 | 先物取引に係る雑所得等 |
| 課税方式 | 申告分離課税 |
| 税率 | 所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315% = 合計20.315% |
| 根拠法令 | 租税特別措置法第41条の14 |
課税対象は、原則として実現した為替差益やスワップポイントです。ただし、スワップポイントの課税タイミングは FX 会社の処理方法によって異なる場合があるため、年間損益報告書や各社の説明を確認する必要があります。含み益そのものは、通常、決済するまで課税対象になりません。ここから取引手数料、書籍代、PC費用の按分などの必要経費を差し引いた額に課税されます。しかしながら、実際の税金計算や確定申告の詳細については、管轄の税務署または税理士等の専門家にご相談ください。
確定申告の義務は一般的な給与所得者の原則的な目安としては、次の閾値が挙げられます。
- 給与所得者(年末調整済みで、他に申告義務がない場合):FXの所得(利益−経費)が20万円超で確定申告義務※確定申告が不要でも、住民税の確定申告は必要となる場合があります。
- 給与所得がない方(個人事業主・専業主婦/主夫等):基礎控除などの所得控除の合計額を所得が超えるかどうかが一つの目安になります。※実際の申告要否は他の所得や控除の状況によって異なるため、税理士や税務署へのご確認ください。
個人のお客様の場合、損益通算は他の「先物取引に係る雑所得等」(CFD、商品先物、日経225先物、くりっく365等)との間でのみ可能であり、株式の譲渡損益・配当所得とは通算できない点には注意が必要です。損失が発生した年は確定申告をしておくことで、翌年以後3年間の繰越控除が可能となり、後年の利益と相殺できる場合があります。ただし繰越控除の適用には毎年の確定申告継続が必須となります。
税制は法改正により変更される可能性があります。実際の申告にあたっては、最新の国税庁タックスアンサーをご確認のうえ、必要に応じて税理士・税務署にご相談ください。
参考記事
まとめ
FXは、世界で1日9.6兆ドル規模が取引される流動性の高い金融商品であり、24時間取引可能、レバレッジによる資金効率の高さ、ショートからの参入容易性、スワップポイントによるインカムゲインなど、複数の収益機会を内包しています。一方で、海外規制当局の調査では CFD 口座の多くが損失となっている実態があり、行動経済学的バイアスや、業者と顧客の間に存在する情報の非対称性など、利益を上げにくい構造的要因も存在することは、複数の公的データから読み取れます。
少額の資金から高いリターンを目指すという試みは、現実には極めて困難であると言えます。その一方で、海外規制当局のCFD関連データを踏まえると、高いリターンを狙うレバレッジ取引では、多くの参加者が損失を経験しうる点にも注意が必要です。本記事のデータをひとつの参考材料として、ご自身のリスク許容度・資金量・取引可能な時間帯と照らし合わせながら、無理のない取引スタイルを模索していくことが大切ではないでしょうか。
引用元・参考文献
- 金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」
- 国税庁タックスアンサー No.1521「外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」
- 国税庁タックスアンサー No.1522「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」
- BIS(国際決済銀行)"Triennial Central Bank Survey 2025"
- BIS(国際決済銀行)"Triennial Central Bank Survey 2022"
- 国際通貨研究所(IIMA)「2022年BIS世界外国為替市場調査について」
- 一般社団法人金融先物取引業協会「外国為替証拠金取引の取引顧客における金融リテラシーに関する実態調査」(2018年9月)
- 一般社団法人金融先物取引業協会「店頭FX月次速報」
- ESMA "ESMA agrees to prohibit binary options and restrict CFDs to protect retail investors"(2018年3月27日)
- FCA "CP16/40: Enhancing conduct of business rules for firms"(2016年12月)
- 日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査」(2025年公表、2024年の有価証券売買損益・含み損益を除く)
- Barber, B. M. & Odean, T. (2000) "Trading Is Hazardous to Your Wealth"
- 租税特別措置法第41条の14
Posted by 株式会社トリロジー
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